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最高裁判所第三小法廷 昭和23年(れ)1976号 判決 1949年5月31日

主文

原判決を破毀する。

本件を大阪高等裁判所に差戻す。

理由

辯護人高畑二郎の上告趣旨第二點は末尾添附別紙記載の通りでありこれに對する當裁判所の判斷は次の如くである。

原判決が論旨摘録の如き證據を綜合して被告人徳山に對する判示第六の事実を認定した事は判文上明である。しかるに原審公判調書を精査しても原判決書摘示の如く原審相被告人田中茂太、梁本昌洙が判示第六事実につき判示日頃、判示賍品を被告人徳山泰治にやった事は相違ない旨の供述をしたことの記載は何處にも見當らない。却て被告人梁本昌洙は裁判長の「壬生森町笹木與吉方で盗んだ白生地二反を徳山にやった事があるか」との問に對し、明瞭に「私は當時はっきり知りませんでした」との供述をしたことが記載されてゐるのである。してみれば原判決は虚無の證據によって事実の認定をした違法があると言わなければならない。この違法は判決に影響を及ぼさないとは限らないから原判決は之の點で破毀を免れない。(昭和二三年(れ)第六八四號同年一二月二七日大法廷判決参照)

よって上告を理由ありとし舊刑事訴訟法第四四七條第四四八條の二によって主文の如く判決する。

以上は當小法廷裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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